宿泊業の人材不足問題【3つのアンケート】で改善する
宿泊業界「最大の課題」
旅館・ホテルなどの宿泊業では長らく「人材不足」がもっとも重要な課題の1つとされてきました。
参考資料:日本・東京商工会議所調べ(2019)
「人手が足りない」という声はどの業界でもよく聞かれるものです。
しかしデータで見ると他業種と比較しても「宿泊・飲食業」はひときわ多く、約8割が「人手不足」だと感じているという深刻さです。
ちなみに離職理由としてよく挙げられるのは、時間的理由(長時間・不規則)と金銭的理由(低賃金)です。
クリアンは、アンケート制作サービスですので、この深刻な課題についてアンケートの面からできることがないかを考えてみました。
人材不足 2つの要素
「人が足りない」という状況はどのように発生するのでしょうか。
今回は「イン」と「アウト」という要素から考えてみましょう。
人材不足は「入ってくる人」が少なく、「出ていく人」が多いことで発生します。つまり人手が足りないという課題への取り組みは、大きく分けて以下の2つが考えられます。
- A.インを増やす=人材募集に力を入れる
- B.アウトを減らす=離職率を下げる努力をする
次の項目では、まず「人材募集」から見ていきましょう。
「人材募集に力を入れる」
スタッフへのアンケート
「人材募集」という観点から考えられるアンケートは2つあります。
1つ目は「スタッフへのアンケート」です。
- この仕事をやっていて一番嬉しかったこと
- この仕事に就いて初めて知った「いいところ」
- この仕事で身についたスキル
- 忘れられないお客様とのエピソード
- 忘れられない同僚とのエピソード
- この仕事をしていてたいへんだと感じること
- どんな旅館スタッフやホテルマンになりたいか
たとえばこのような設問を用意し、アンケートを実施して結果をまとめます。
これらの結果から、リアルな宿泊業の仕事が浮かび上がってきます。
「この仕事をすると、こんな(良い)ことが起きる」という生の声を、この仕事に興味のある人たちに届ければ、しっかりと訴求することができます。
企業説明会や求人ポスターなどでアンケート結果をまとめて紹介するのが良いですね。
※生の声の紹介イメージ
また、テキストマイニングを併用する方法もオススメです。
宿泊客様へのアンケート
「人材募集」という観点から考えるアンケート。
2つ目は「宿泊者様へのアンケート」です。
これまでお泊りいただいたお客様へアンケートを実施します。
- この宿のスタッフとの思い出で、心に残っているものをお聞かせください
- 他のお宿のスタッフと「ここが違う」と思う点があればお聞かせください
これらのヒアリング結果をわかりやすくまとめます。
この「まとめ」を見ると、宿泊客様とスタッフの方のリアルなコミュニケーションをイメージできるようになります。
スタッフへのアンケートと同様、集計結果の「まとめ」を企業説明会や求人ポスターなどで紹介します。
「お客様からこんなにも感謝していただける仕事だ」ということを、生の声を活用して伝えていきます。
もちろん、お客様にお答えいただくアンケートには回答の利用用途を明記する必要があります。
例:
「このアンケートの回答は、個人が特定されない形で当館のプロモーションや求人資料に掲載される可能性があります」
「離職率を下げる」
アウトを減らす…つまりスタッフの離職率を下げる、というアプローチです。
アンケートで離職率を下げるためにできることはいったいなにか。
それは「ES(従業員満足度)アンケート」です。
ES(従業員満足度)について
「お客様がどれだけそのサービスに満足されたか」という指標です。
これに対し、従業員満足度は「従業員がどれだけ満足して働くことができているか」という指標です。
ES(Employee Satisfaction)と略されます。
ESを左右する要素は様々です。
- 職場環境
- 運営への満足感
- 職場での人間関係
- やりがい
そして、ESが高まることで以下のような「良いこと」があると言われています。
- 生産性の向上
- 離職率の低下
- 顧客満足度(CS)の向上
ESアンケートで得られるもの
- 今の仕事内容にどの程度満足していますか?
- 仕事をする上で困っていることはありますか?
- もっとどうなれば良いと感じますか?(職場環境、労働時間、待遇面、その他)
どの職場でもそうですが、退職するとき、人はなかなか「本当の理由」を教えてはくれないものです。
「辞めよう…」と決意し、静かに去っていってしまう。
すると運営側としては、何が原因だったのかが永遠にわからないままです。
たとえば新しくスタッフを迎え入れても、同じ部分でつまずいてしまう可能性があるんです。
「もうダメだ、辞めよう」
そんな事態になる前に現場の生の声を集め、対処する。
1人が声を挙げたことは、他のスタッフも多かれ少なかれ同じように感じている可能性があります。
もちろん、すべての声に応えることはできないかもしれません。
それでも、メリットはたくさんあります。
・運営側がESを気にしているという点が、スタッフにしっかりと伝わる
・現状の問題把握ができる
・今後の施策の参考にできる
これだけでも従業員満足度の改善に効果があると思いませんか?
記名式か無記名か
無記名の利点は、たくさんの声が集まりやすいことです。
しかし、スタッフが抱えている問題や悩みを個別にフォローできないというデメリットもあります。
個別にフォローやヒアリングしたい場合は、記名式にします。ただしそのときは目的や考えを丁寧に伝えることが重要です。
そのときに必ず伝えたいことは以下のような点です。
- 悪い点を書いても、評価は下がらない
- むしろ言いにくいことを施設のために言ってくれていることに感謝したい
- 一緒に良い施設を作り上げていきたい
記名式が良いか、無記名が良いか。これは一概には言えません。メリットとデメリットから最適なものを判断していきたいものです。
ポイントは心理的安全性
「何を言っても大丈夫だ」
「一緒によい環境を作っていきたい」
と思ってもらえる安心感です。
ちなみにこの職場での安心感は「心理的安全性」と呼ばれ、Google社が重要視していることで近年特に注目されている考え方でもあります。
スタッフの目線でしか気づけないことはたくさんあるものです。
スタッフからの意見が出やすい環境かどうかが、組織としての「強さ」に大きく関わることは想像に難くありません。
おわりに
上のような課題において、問題解決のための情報収集にも活用できるんです。
途中でも書きましたが「より良くしようとしている」という思いが伝えられるという点も、大きなメリットです。
相手が宿泊されるお客様でも一緒に働くスタッフでも、「良くしようとしている」ということが伝われば、それが潤滑油になってくれるものです。
「こんなことはできるの?」
という疑問などがあればぜひこちらからお問い合わせください。