【目指せ! 旅館・ホテルのCS向上】 6分でわかるCSポートフォリオ講座
CSポートフォリオってなに?
今回は、【宿泊者アンケート】と【顧客満足度の向上】をつなげるためのパワフルなツールをご紹介します。
その名も「CSポートフォリオ」です。
まずは、用語の説明から始めていきましょう。
CS…Customer Satisfaction(カスタマーサティスファクション)の略称。つまり顧客満足度のことです。
ポートフォリオ…元々の意味は「書類入れ」。ひとまとめにしたパッケージのようなものを指します。
まとめてみます。
つまりCSポートフォリオは「顧客満足度について深掘りするための情報をワンパッケージにした図」のことなんです。
具体的にどう役立つの?
顧客満足度を向上させたい。
これはサービス業に関わるすべての人が思っていることです。
しかし同時に、こう思うこともあるはずです。
でも、何から始めたらいいんだろう??
CSポートフォリオは、そんな方にぴったりの分析手法です。
「何に役立つか」といえばずばり、CS向上のために「まずやるべきこと」を見つけることができるんです。
どうやって作るの?
CSポートフォリオが何なのかはわかりました。
どう役立つのかもわかりました。
次に気になるのは、その作り方ですよね。
旅館やホテルのCSポートフォリオは、宿泊者アンケートを用いて作ります。
宿泊客様に以下の2点を質問します。
- 各要素についての満足度
- 総合的な満足度
要素とは「料理」「客室」「スタッフ」「大浴場」など、満足度を構成していると考えられる項目のことです。
たとえばある1人のお客様の回答が次のような結果だったとします。
- 料理にはとても満足した
- 客室にはやや不満だった
- 総合的な評価はとても満足だった
すると、総合的な評価に及ぼす影響は「客室」よりも「料理」の方が高かった、ということがわかります。
これを全回答者のデータで統計的に分析しよう、というのがCSポートフォリオの考え方です。
具体的な手法の解説
CSポートフォリオ分析は、次のようなステップで行います。
【STEP1】要素のピックアップ
貴館にとって顧客満足度に影響すると考えられる要素をピックアップします。
例:
- 客室
- 夕食
- 朝食
- 大浴場
- スタッフ
- 宿泊料金
- 施設
【STEP2】設問を作る
STEP2は2段階あります。
- 各要素の満足度を5段階で尋ねる設問を作る
- 総合的な満足度を5段階で尋ねる設問を作る
各要素の満足度を尋ねる場合は、たとえばこんな感じです。
設問:お部屋にはご満足いただけましたか?
選択肢:大変満足 / やや満足 / 普通 / やや不満 / 不満
ついで夕食、朝食などについても同じように尋ねていきます。
そして総合的な満足度を尋ねる設問は、たとえばこんな感じです。
設問:当館での宿泊体験にご満足いただけましたか?
選択肢:大変満足 / やや満足 / 普通 / やや不満 / 不満
「総合的な満足度はいかがですか?」と尋ねるよりは、お宿のテイストに合わせて工夫を凝らすと良いでしょう。
【STEP3】アンケートを実施する
設問ができたら、いよいよアンケートを実施します。
ちなみにこの後にデータ集計(分析)のステップがあります。
紙アンケートでは分析の際、複雑な計算が必要になり、とても手間がかかってしまいます。
そのためパソコンでの分析ツールが活用しやすいWebアンケートの方がオススメです。
【STEP4】分析する
アンケートを実施したら「満足度」と「重要度」を算出します。
満足度の算出方法
満足度とは、全体に占める満足した人の割合のことです。
各要素で「大変満足」または「やや満足」と回答した人数を、回答者全体の人数で割ることで算出します。
重要度の算出方法
重要度とは、各要素の満足度が総合満足度とどのくらい相関関係があるかを示す値です。
総合満足度と、各要素の満足度を元に相関係数を算出します。
相関係数は「平均値 → 偏差 → 分散 → 標準偏差 → 共分散」と計算していくことで求められます。
※Excelでは分析ツールの「相関係数」を使えば自動で割り出してくれます。
はい、ここでなんだか急に専門的になりましたね。。
上記の算出方法は、完全に理解しなくとも、仕上がりデータを見ることはできます。
もし難しい場合は、意味合いだけを押さえていただき、算出方法は読み飛ばしていただいても大丈夫です。
※実際のややこしい計算は私どもにおまかせください^^
※要素別の重要度と満足度のイメージ(※ダミーデータです)
【STEP5】満足度と重要度を散布図にする
STEP4で算出したデータを元に、以下のような散布図を作ります。
縦軸:満足度
横軸:重要度
縦のオレンジ線:重要度の平均値
横のオレンジ線:満足度の平均値
これでCSポートフォリオの完成です!
ちなみにこの作図もExcelのグラフ機能を使うと便利です。
CSポートフォリオの見方を詳しく解説しますね。
各要素が、A~Dのどのエリアにあるかで以下のように分類できます。
A:重点維持項目…満足度は平均以上。重要度も平均以上。
スローガンは「今、できている。これからも全力で取り組もう」
B:維持項目…満足度は平均以上。重要度は平均以下。
スローガンは「今、できている。これからも継続しよう」
C:改善項目…重要度は平均以下。満足度も平均以下。
スローガンは「今、できていない。改善を心がけよう」
D:重点改善項目…重要度は平均以上。満足度は平均以下。
スローガンは「今、できていない。全力で改善に取り組もう」
さて、この中でもっとも優先すべき項目は何でしょうか?
答えは、Dの重点改善項目です。
これは、重要度が高いにも関わらず満足度が低いというエリアです。
つまりこのお宿では「朝食」ついで「客室」の満足度を上げていくことが急務であると言えます。
いかがですか?
このように図解化すると、まず何から取り組めばよいかが明確になりますね。
※上記の図はダミーデータから作図しています。実際の図はお宿によって異なります。
まとめ
今回は少し専門的な「アンケート結果からの分析手法」について解説しました。
このような数字を活用した調査手法を「定量調査」と呼びます。
これに対し、このコラムで普段よく取り上げているような、言葉や文章からお客様の心理を汲み取る調査は「定性調査」と呼びます。
定量調査と定性調査は、それぞれにメリットがあります。
「何を知りたいか」によって使い分けていくのがベストですね。
その意味で、アンケート制作の第一歩は「何を知りたいか」を明確にすること、と言えるかもしれません。
クリアンでは、貴館が知りたいことの聞き取り(ヒアリング)からお手伝いいたします。
まだどこにもないアンケートを一緒に作りませんか?
新しいアンケートにご興味がありましたらお気軽にお問い合わせください。