チップ文化から考えるサービス品質向上のアイデア
海外のチップ文化
つい先日、業務中の雑談の際に「海外旅行時のチップ」の話題になりました。
私自身は海外旅行をしたことがありません。
とはいえ、ホテル宿泊時にスタッフに渡す「チップ」のお話は、もちろん耳にしたことがあります。
サービスを受けるごとに宿泊者はスタッフに心付けとしてドル紙幣を何枚か渡す。
そしてこのチップは直接受け取ったスタッフ自身の収入となります。
給与相場は、チップをもらうことを前提としてやや低めに設定されていることが多いとか。
このチップ文化。
日本の旅館やホテルでは、まだそれほど馴染みのある文化にはなっていませんよね。
チップの相場であるドル紙幣数枚というのは、日本円では小銭。
でも小銭をジャラジャラと渡すわけにはいかず、紙幣となると1000円以上になる…。
そのあたりも、日本で定着しにくい原因になっている様子です。
ちなみに日本では、チップを受け取ったとき、それをどうするか(個人のものになるか、みんなでわけるか、売上となるかなど)もまちまちのようですね。
チップ文化のメリット
こんなふうに、なかなか日本では浸透しにくいチップ文化。
私もそうですが、海外旅行の経験値が少ないとちょっと戸惑いがちなものです。
でも、この文化にはたしかなメリットもあります。
- スタッフと宿泊客様の接点が生まれやすい(つながり感が強くなる)
- 「良いサービスを提供する」というスタッフのプロ意識が育つ
スタッフ→サービスを提供する
お客様→感謝を行為として示す
これは「サービスを提供する側」と「サービスを享受する側」、それぞれの自覚を呼び起こすものです。
何より、顔を合わせてそれを行うことで、人と人との関係性が生まれます。
このことが両者にとって良い効果をもたらすことは想像にかたくありません。
日本では馴染みにくい文化とはいえ、これらのメリットを見過ごすのはもったいない。
メリットだけでもなんとか取り入れられないものか…と考えてみました。
「サンクスカード」という提案
そこで思いついたのが「サンクスカード」制度です。
まずはフローをご紹介します。
お客様がチェックインされる際、フロントで「サンクスカード」を5枚お渡しします。
大きさは名刺サイズくらいの簡単なもので良いでしょう。
デザインは、やわらかい雰囲気のもので「ありがとう」や「Thank you」など文字を入れるのがオススメです。
「サンクスカード」をお渡しするときには、以下のようなアナウンスをします。
当館にご滞在中、スタッフのサービスにご満足いただけることがありましたら、是非そのスタッフにこのカードをお渡しください。スタッフの励みにさせていただきます。
スタッフが受け取ったカードの枚数は、毎月集計します。
そして枚数に応じたインセンティブ(報奨金や記念品)を贈ります。
【ポイント】
- お客様はサンクスカードがインセンティブにつながると知りません
- 毎月のインセンティブは高額である必要はありません
サンクスカードで得られる期待効果
海外の映画やドラマなどを観ていると…
「ありがとう。助かったよ」
「素晴らしいサービスだね」
「感激したよ」
…など、感情を素直に伝えるシーンをよく見かけますよね。
一方、「察し」の文化で育った日本人。
「ありがとう」という気持ちがあっても、なかなかストレートに伝えられないもの。
もちろん、日本人にだってたしかに「ありがとう」の思いはあるんです。
その感謝の気持ちは伝わった方がお互いに幸せですよね。
この気持ちを伝える呼び水として「サンクスカード」が活用できるのではないか、と思うのです。
あらかじめ用意されているカードを渡すだけなら、シャイな日本人にもハードルが低そうですよね。
そして、受け取ったスタッフの方々にも良い効果が期待できます。
お客様からの明確な「ありがとう」を受け取ることで「どんなふるまいが喜ばれるのか」を、実感を持って知ることができるんです。
各人が「喜ばれること」を肌で感じることは、組織全体のサービス品質の向上に役立つことでしょう。
もちろん「ご褒美」も嬉しいですしね。
まとめ
お客様の感謝の気持ちそのものが、スタッフに還元されていく
そんな考えに基づく「サンクスカード」制度は、顧客満足度だけではなく従業員満足度の向上にも期待ができそうです。
今はまだ、ふとした思いつきのレベルですので、改善する余地はあるかもしれません。
たとえばバックヤードスタッフの方へのフォロー。
これは、海外のチップ文化においても言えることですが、お客様と顔を合わせる場面の少ない方は、サンクスカードを受け取る機会も限られてしまいます。
どのように公平化するべきなのかは、一考する必要がありそうですね。
このように、まだまだブラッシュアップが必要かもしれませんが、何らかの形で貴館の業務改善のヒントになれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。