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【宿泊者アンケート】ネガティブコメントの上手な受け止め方

アンケートのネガティブコメントを考える

旅館・ホテル関係者の皆さまに質問です。

宿泊者アンケートを実施するとき「ポジティブなコメント」「ネガティブなコメント」はどちらがほしいですか?

答えはもちろん、ポジティブなコメントですよね。
私も同感です^^

私は長いことカスタマーサポートの仕事をしてきましたが、お褒めの言葉やお礼の言葉をいただくと、それだけで活力をもらえます。
日々の苦労を乗り切る原動力はこれがすべて、と言っても過言ではありません。

でも、ここで少し考えたいことがあります。
「ネガティブコメント」は果たしていらないものなのか。
今回はネガティブコメントについて深掘りしてみたいと思います。

ポジティブな意見とネガティブな意見のイメージ

 

【貴重なご意見】の本当の意味

結論から言いますと、ネガティブコメントは必要不可欠なものです。

なぜでしょうか。

それは「サービスはご指摘を受けながら育つもの」だからです。
これは、どのサービス業でも言えることだと私は考えています。

具体例を見ていきましょう。

「ご滞在中、気になった点がありましたらぜひお聞かせください」

アンケートでこのような設問があったとします。
そして、その回答の中に、こんなコメントが。

「ロビーの空調が効きすぎていて寒かった」

ロビーが寒い。

これは実のところ、スタッフの皆さんには気づきにくいことかもしれません。
ご存知の通り、空調の設定温度は万能ではありません。たとえば28度に設定したとしても、その空間の室温が28度ぴったりになるわけではありません。

そして、ロビーで忙しく動き回っているスタッフの皆さまと、じっとしている宿泊客様では「体感温度」が異なります。

お客様しか知り得ない改善点。
これを教えていただけることが、ネガティブコメントが必要な大きな理由です。

お客様サポートではよく耳にする決まり文句で「貴重なご意見」という言い方があります。
あまりにもよく聞く言葉なので、もはや意味が上滑りしてしまい、本来の意味を考える機会はあまりないかもしれません。

でも、ネガティブコメントはまさに「貴重なご意見」なのです。
なぜなら、運営側が気づきにくい点を指摘してくださり、改善のヒントをくださるのですから。

テレフォンオペレーターのイメージ

 

アンケート結果の怖さ

でも優しく教えてくださるお客様ばかりではないでしょう?

そんな声が聞こえてきそうですね。
まったくそのとおりです。

アンケートの結果を見るときの怖さはそんなところにあります。

「ロビーが寒すぎ!」

そんなふうに書かれるかもしれません。
ときには、もっと厳しい言葉でご指摘を受けることもあるかもしれません。
受け止める側も生身の人間ですから、傷ついてしまうこともありますよね。

それでも「見たくないからネガティブコメントは集めない(=質問しない)」というのはお勧めできません。
先にお伝えしたとおり、どんな言い方をされたとしても、その内側にあるものは「貴重なご意見」なのですから。


耳の痛いコメントの受け止め方

ここで、カスタマーサポート歴20年の私から1つコツをご紹介します。
ネガティブコメントの受け止め方のコツは「フィルターを通すこと」です。

「どんな書かれ方をしているか」ではなく、「何をどうしてほしかったのか」という目線で見るようにします。

  • 「ロビーが寒すぎてこごえてしまった」
  • 「空調効きすぎ。こちらのことを考えてほしい」
  • 「寒くて居心地が悪かったです」


こうしたお言葉を、言葉ごと受け止めるのではなく、お客様はなぜそう書いたのかを考えます。その奥底には「こうなっていたらよかったのに」という思いが必ずあるはずです。

これを掘り下げていくと「寒くないロビーで心地よく過ごしたかった」という真意が見えてきます。

この真意が見えると、お客様の「がっかり感」に共感することができるようになります。

  • 「お客様がそうおっしゃるのももっともかもしれない」
  • 「不快な思いをさせてしまって申し訳なかったな」


表面上の言葉の強さに怯えることなく、こんなふうに受け止めることができればもう大丈夫です。
共感ができると、不思議と怖さはなくなるものなんです。

落ち込みすぎずに上手に受け止めて、反省するところは真摯に反省する。そんなふうにして、よりよいサービスを作り上げていきたいですね。

いいアイデアを思いついた女性

 

サイレントクレーム

皆さんはサイレントクレーム(静かなクレーム)という言葉を聞いたことはありますか?

一般的なクレームは、満足なサービスが得られなかったときにそれを強く主張する形で発生します。
サイレントクレームは、言葉の通り「静かに」発生します。

つまり、不満を持ってもそれを言わない。
ただ静かに不満を抱えつつ「二度とそのサービスは使わないようにしよう」と決意します。

これは、運営側としては一番の損失です。
なにしろ、「どこにどんな不満をもったか」を知らないまま、それどころかお客様が不満を感じたことすら気づけずに去っていかれてしまうのですから。

これだと、直しようがないですよね。

何も言わずに去っていってしまうお客様

 

サイレントクレームと比較してみると、お客様から声を挙げていただけることのありがたさが実感できると思います。
言っていただければ、次につなげることができますからね。

そして何より、声を挙げてくださったということは、「次に期待してくださっている」という気持ちのあらわれでもあります。本当に落胆し、あきらめてしまわれた場合、コメントする必要はないのですから。


ネガティブ、ウェルカム。

今回は、ネガティブコメントの重要性とありがたみを解説しつつ、その上手な受け止め方をご紹介しました。

ポジティブなご意見は、運営の励みになります。
ネガティブなご意見は、改善のヒントをくれます。

つまり、どちらも生長の糧になる、ということです。


せっかくなので宿泊者アンケートを実施するときは、臆することなくネガティブコメントも積極的に集めていくようにしたいものですね。

今回のコラムをお読みいただいたことで「貴重なご意見」という言葉の受け止め方が少しでも変わったとしたらとても嬉しく思います。
今回もお読みいただきありがとうございました!

日光や雨を浴びながら成長する植物