「大浴場の場所」わかりやすく説明する自信、ありますか?
「ご不明な点」を説明する仕事
社会に出て20年以上、カスタマーサポートの業界でお仕事をしてきました。
その中でもっとも長い間、身を置いたのはプリンターのユーザーサポートです。
操作についてご不明な点、お困りの点がありましたら、こちらにお問い合わせください。
TEL:0120-XX-XXXX
取扱説明書によく見かける記載。
この電話番号にかけたとき、対応するのが私たちの役割でした。
初めて新型のプリンタを手にしたお客様、初めて新機能を使おうとしているお客様から連日お問い合わせがあります。
「商品知識が豊富=わかりやすい」ではない
操作が不慣れなお客様にわかりやすくご案内する。
そのために大切なことは何だと思いますか?
商品知識。仕様や使い方を熟知していること。
もちろんこれも重要です。
でも、商品知識がたくさんあるのに説明がわかりにくくなることがよくあるんです。
- 専門用語が多すぎてよくわからない…
- わからないから問い合わせているのに、そう早口で言われても…
お客様から上のような不満が聴こえてくるのは、そういうときです。
その原因は「お客様がどこでつまづくかがわかっていない」ということ。
- 用語が難しくてつまずく→かみくだいた単語を使う
- よく勘違いされる部分→ていねいに時間をかけて説明する
- 早口で流れるような説明→説明する側は慣れていても聞く側は初めてと自覚する
- わからないまま話が進む→反応を見て理解度をチェックしながら進める
こんなふうに一つ一つツボを押さえていくことが大切なんです。
言い換えると【お客様目線を持つ】ということです。
何よりも皮肉なのが、経験を積んで商品知識をつければつけるほど「初見の感覚」からは遠ざかってしまうという点です。
いわゆる「何がわからないかがわからない」という状態ですね。
製品に詳しくなればなるほど、よほど気をつけなければわかりやすい説明ができなくなってしまう。
ユーザーサポートの業界でありがちなケースです。
大浴場はどこですか?
さて、旅館・ホテルなどの宿泊施設の話に置き換えてみましょう。
- 大浴場はどこですか?
- 夕食会場はどこですか?
- 朝食のシステムを教えてください。
- 浴衣、タオル、その他アメニティグッズの利用の仕方は?
初めて泊まりに来られるお客様は、わからないことだらけです。
上のような疑問を抱えながら来館することになります。
ほとんどの場合、チェックイン直後の説明で上記の潜在的な疑問をカバーされていることと思います。
このコラムをお読みの皆さんは「説明のわかりやすさ」に自信はありますか?
もちろん施設のスタッフの方々は、「どこに何があるか」「何をどう使えばよいか」を熟知しています。
しかしこれは、「わかりやすく説明できる」と同義ではありません。
ベテランのジレンマ
たとえば、新人教育を終えたばかりのスタッフのAさん。上手に説明ができるかどうかを、ベテランスタッフのBさんがチェックすることになりました。
Bさんはベテランなのでもちろん「大浴場への道のり」を知っています。
この状態でAさんの話をきいていると、説明がわかりやすいかどうかに関わらず、脳内には道のりが浮かんでしまいますよね。
あらかじめ情報を知っている状態で説明を聞くのと、真っ白な状態で聞くのとでは、聞き手としての思考がまるで違います。
もちろん実際のお客様は後者です。
館内の地図が頭に入っているベテランのスタッフほど「上手に説明できているかどうか」が判断しにくいもの。
このように、サービスの品質を身内だけでチェックすることは、意外と難しいんです。
その結果として、施設内では発見できなかった問題点がお客様に指摘され、「館内の説明がわかりにくかった」という口コミが生まれる原因になったりもします。
アンケートによる早期発見
では、この問題を防ぐにはどうすればよいでしょうか。
ご宿泊アンケートの自由記入欄を利用するのも1つの方法です。
「お気づきの点があればご記入ください」
しかしこれは、あくまでも待ちの姿勢。
宿泊客様がたまたま思い至り、自分から書こうとしてくださらない限りは情報を手に入れられません。
攻めの質問
もう少し攻めるとすれば、このようになります。
■設問1:
スタッフの館内説明はいかがでしたか?
わかりにくかった点があればお選びください。
大浴場 / 食事会場 / 庭園 / バー / その他( )
■設問2:「ご説明がもっとこうなれば」というご意見があればぜひお聞かせください。
( )
部屋番号の記入欄も設けておけば、担当したスタッフの特定ができます。
お客様からの指摘が多いスタッフがわかれば、自然と指摘の少ないスタッフもわかります。
宿泊客様から見て「わかりやすい説明」ができるスタッフの話法をモデルケース(お手本)にして勉強会を行い、他のスタッフにも習得してもらう、という方策も考えられます。
「お客様に教えていただく」という発想
「サービス向上に活用させていただきます」
アンケートではこんな言葉をよく見かけます。
あまりに見慣れてしまっていて、深い意味を感じにくいかもしれませんが、今回ご紹介したケースは、まさにサービス向上の活用例と言えます。
施設内で発見しにくいことをお客様に教えていただくというのも、ご宿泊アンケートの大切な役割の1つです。
ちなみに上記の「攻めの質問」をアンケートに取り入れた場合、得られる回答例として以下のようなものが考えられます。
説明を受ける時点では私たちはロビーとフロントしか知らないので、そこを起点にして話してほしい。
泊まる部屋へ先に案内してもらって、そこを起点に、行く可能性のある設備(大浴場・食堂など)への道のりを教えてもらえると助かります。
もちろん、何がわかりやすいかは個人差がありますので、いただいたご意見から最適なものを選択する必要はあります。
アイデアをたくさんいただければ、それだけ多くのお客様に満足いただける方法が見つかりやすいですよね。
ご宿泊アンケートの活用方法は無限大。フル活用していきましょう。