入社面接の質問に学ぶ 問いの「第三者」目線
入社面接をやるワケ
入社面接。
社会人の大半は必ずと言っていいほど経験しているものです。
入社試験の朝。真新しいスーツ。試験会場への道のり。
どれだけ時間が経ってもなかなか忘れらないものです。
学力検査、適性検査とともに、採用プロセスの中で一度は出くわすのが面接です。
ところでこの入社面接。何のためにあるかご存知ですか?
その目的はもちろん、その組織に適した人材かどうかを見極めるためです。
特に、面接をする側としてポイントになるのは「その人の良さをどれだけ引き出せるか」です。
面接官の本当の役割
実を言うと私は会社員時代、採用面接官をした経験があります。
面接を受ける方々は例外なく緊張しているものです。
そして緊張していると、本来の実力を発揮できない人も少なからずおられます。
これは私の個人的な考えですが…緊張している人材を、緊張していることだけを理由に落としてしまうのは、とてももったいないことです。
採用面接なんて誰しも緊張するものです。ガチガチに緊張している中で見せるパフォーマンスと、仕事に慣れたときに発揮できるパフォーマンスはまた別のものです。
だからこそ「志望者の緊張をほぐし、良さを引き出す」ということが面接官の大きな役割だと考えています。
人材は貴重です。本当は良いものを持っているのに、緊張で出しきれず縁が結べないのはお互いにとって残念なことですからね。
「定番の質問」に潜む問題点
そんなわけで、質問の仕方には当時からかなり気を配っていました。
「あなたの長所を教えてください」
この聞き方、どう感じますか?
面接する側としては、志望者の長所を知りたい。
その思いを乗せたストレートな質問です。
しかし、面接を受ける側としては、どうでしょう。
- 自分は今、試されている
- 使える人材かどうかを見定められている
- うまく答えなければ
ただでさえ緊張感のある面接の場で、そんな思いが渦巻いてしまうとなかなかうまく答えられませんよね。
「定番の質問」の言い換え
上のような質問は、その意味で「緊張を促してしまう聞き方」であるとも言えます。
だから、こんなふうに言い換えてみます。
「あなたは、同僚や友人にどんなところを褒められることが多いですか?」
志望者の方の頭に、同僚や友人の顔が浮かびます。
そして褒められた過去の経験をリアルに思い出します。
これなら答えやすいですよね。
そのときの誇らしい気分を再現しながら自信を持って答えられるのではないでしょうか。
そしてその答えは【第三者の目線】を通したものであり「私の長所は○○です」という回答よりも正確性がある、とも言えます。
宿泊者アンケートへの応用
この「問いの第三者目線」。
旅館やホテルの宿泊者アンケートに置き換えてみましょう。
当館のサービスでもっともご満足いただけたものはどれですか?
お部屋 / 内風呂 / 露天風呂 / 夕食 / 朝食 / その他( )
これは「サービスの満足度」を調べるための一般的な設問です。
この設問にアレンジを加えるとすれば、どうなるでしょう?
たとえば、こんな聞き方はいかがでしょうか。
当館のサービスの中でもっともご友人に勧めたいと思えるものはどれですか?
お部屋 / 内風呂 / 露天風呂 / 夕食 / 朝食 / その他( )
さらにこのように付け加えてみます。
それをご友人に勧めるとき、どのように伝えますか?
( )
「目的」によって質問を使い分ける
「満足度を調べる」ではなく「強みを知る」という目的でアンケートを行う場合は、このような連続した質問が良さそうです。
この聞き方だと、回答される方は「伝える相手」を想像しながら答えを考えてくださいます。
元の設問は貴館と回答者様が向き合っている構図なのに対し、アレンジ後の設問では、回答者様とご友人が向き合っている構図です。貴館は回答者様のかたわらにいるイメージですね。

すると、単に目の前の当事者(旅館・ホテル)に感想を伝えるときよりも「強みを第三者にわかるように話す」という意識が強まります。
同じ満足度の質問であっても、その目的によって聞き方を少しずつ変えてみることが、良いアンケートを作るコツです。
注意深く見回してみると世の中は、アンケートに限らず「質問」にあふれています。
ときにはこんなふうにアンケートの外側からも学びを得て、日々、「聞き方」に磨きをかけております。