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テンポの悪いアンケートを作ろう

2つのアンケート 

今回のテーマは「テンポの悪いアンケート」です。
何のことだか、ちょっとわかりにくいですよね。

ご理解いただきやすいよう、ここに2種類の宿泊者アンケートをご用意しました。
まずはこの2つを比べてみてください。

アンケート1

スタッフ、部屋、夕食、大浴場についてそれぞれ3~4項目の満足度調査。すべて5段階評価の表を埋める体裁。最後に自由記入欄がある。


大項目は「スタッフ」「部屋」「夕食」「大浴場」の4種。

それぞれに3~4の小項目があり、満足度を問う形です。
整然としていて、見やすいですね。
回答者は、基本的には数字に丸をつけるだけで答えられます。
そして最後に自由記入欄があります。

これはよく見かける体裁ですよね。
では、次にアンケート2をご覧ください。


アンケート2

スタッフ、部屋、夕食、大浴場について5段階の満足度を問う全4問。各問にそれぞれ自由記入欄を設けてある。

ヒアリングしたいテーマはアンケート1と同様、「スタッフ」「部屋」「夕食」「大浴場」の4種類。
それぞれの満足度を質問しています。

ただし「フロント」「案内係」などの小項目は設けていません。
設問末尾のカッコ書きで記載しています↓

「スタッフの対応の満足度はいかがでしたか?」という設問の後に以下のような補足がある。フロント、案内係、食事会場、大浴場など


これには、回答するときにエピソードを思い出していただくための「呼び水」としての役割があります。

そして、各設問の直後に自由記入欄を設けており、評価の根拠を自分の言葉で記載しやすくしています。


答えやすさと「生感」と

アンケート1もアンケート2も、主催者側が聞き取りをしたい要素は同じです。

では答える側からすると、どちらのアンケートの方が答えやすいでしょうか。

回答に要する時間だけを考えると、前者の方が圧倒的に速そうですね。
急いでいる人もあまり考えずに答えられます。

では、別の質問です。

どちらのアンケートの方が、「生の答え」が集まりそうですか?

これは、後者ですよね。
さて、なぜそうなるのでしょう?

キーワードは「テンポ」です。

アンケート2は、文字を読まなければ答えられない。
あえて「テンポよく答えられない設計」になっているんです。
そのため設問の都度、立ち止まって少し考える必要があります。

対してアンケート1では、数字だけを見つめながら、サラサラとテンポよく答えることができてしまいます。
あまり考える必要もなく、楽に答えられます。

テンポによる比較イメージ

 

回答率と負荷と

5段階評価をする→これを踏まえて自由回答をする
アンケート2の一番のポイントは、この構造にあります。

もちろん、この自由回答欄への記入は必須ではありません。

しかしアンケート2のような構造であれば、比較的多くのお客様が何かしらの言葉を残してくださるでしょう。
直前に「満足」を選択した人も、「不満」を選択した人も、それぞれに理由を持っているので、記入へのハードルが低いんです。

  • なぜ大変満足なのか
  • なぜ大変不満なのか

わざわざ自問自答するまでもなく頭に浮かんでいるなら、書くのもそう面倒ではないですよね。

結果としてアンケート1に比べ、自由記入の回答率は格段に上がるはずです。

もちろん、その都度立ち止まって考えていただく必要があるわけですから、お客様の負荷は少し増えます。
この形式の場合、設問の数が増えるほど疲労感も増えるという点は抑えておきたいポイントです。

設問が増えると負荷が増える

 

 

そこにある「対話感」

アンケート1とアンケート2。
2種類の体裁を見てきました。

答える側の目線に立ったとき。
「どちらのアンケートが心地よいか」と問われれば、これは好みが分かれるかもしれません。

でも、アンケート2の方が「人間に質問されている感じ」が強いと思いませんか?

淡々と5段階評価を求められるよりも、その都度、体温を感じる設問が差し挟まれる方が「対話感」が強くなります。
この方がお客様も親身になって答えてくださるものです。

「生の声」を集めやすい理由は、ここにあります。

反対に「できるだけ多くのデータを効率よく集めて数値化したい」という場合はアンケート1の体裁の方が適切ということができます。

アンケート設問は意外と奥深いものです。
「完全無欠のアンケート」というものがあるわけではありません。

「手に入れたい情報」「実現したいこと」「設問数」「設問の仕方(体裁)」「お客様への負荷」など様々な要素を考慮し、「最適なバランス」を構築する必要があります。

「テンポの悪いアンケート設問」が効果的なこともある。

これが今回の結論です。
貴館のアンケート作りのお役に立ちますように。