宿泊者アンケートの回収率を上げる「ラポールの形成」
2%の壁
突然ですが、貴館の宿泊者アンケートの回収率はどのくらいですか?
宿泊業界に限った話ではありませんが、お客様からフィードバックを得られる割合は約2%という説があります。
つまり100人のお客様の内、回答してくださるのはたったの2人。
この割合で100個のご意見が集まるまでには、なんと5000人の利用者が必要ということになります。
5000人。
これはなかなか果てしない数字ですね。
一大テーマとしてのアンケート回収率向上
お客様の声を集める。
そう考えたとき「できるだけたくさんの方にサービスを利用していただく」ということはもちろん大切です。しかし、それだけではなかなか道は長そうですね。
まとまった量のデータを集めるためには膨大な数の利用者が必要になりますから。
つまり、できるだけ取りこぼしなくお客様の声を集めようとしたら「回収率の向上」が欠かせないテーマであることは間違いありません
では回収率が上がるアンケートとは、どんなものでしょうか。
今回はこれを考えていきたいと思います。
ラポールの形成
最初にお伝えしておきたいこと。
それは「回収率の高いアンケート=答えたくなるアンケート」であるということです。
では、どんなアンケートなら答えたくなるでしょうか。
まっさきに考えられるのは、「お礼の品を用意する」ということ。これはとても効果がありそうです。しかし今回の主題とはちょっとずれますので、また別の機会に解説することにしますね。
参考:宿泊者アンケートの回収率を上げる特典のアイデア20
もう1つ考えられるのが、信頼関係(ラポール)の形成です。
「ラポール」をより深くご理解いただくために、ここで例え話をしてみます。
街中で突然、見知らぬ人にこんなことを聞かれたらどう感じますか?
「今まで泊まった宿の中で、最高だった体験を教えてください」
繰り返しますが、初対面の人に突然聞かれた場合です。
もちろん警戒しますよね。
もしかすると「テレビのインタビューかな」と思うかもしれません。
そうだとしても回答するかどうか、まずは慎重になりますよね。
それでは同じ質問を、馴染みのカフェで仲の良い友人にされたとしたらいかがでしょう?
人は基本的に「自分のことを質問されるのは嬉しい」という傾向があるそうです。ご友人に自分の「最高の体験」を尋ねられたなら、その時を思い出しながら楽しげに、活き活きと語れるのではないでしょうか。
同じ質問なのに、警戒したり、楽しげに語ったり。
この差は何か。
それは、ラポールの有無です。
宿泊者アンケートで考えるラポール形成
つまり、宿泊者アンケートでも、このラポールが形成できるならば回収率の向上が期待できるんです。
具体的には何をすべきか。考え方としては【外側】と【内側】の2つがあります。
外側の工夫
外側というのは、アンケートそれ自体ではなくそれを取り巻く環境。
たとえば渡し方です。
宿泊者アンケートは、一般的にはお部屋にひっそりと置かれていることが多いようです。
それを目にした人の中で、気の向いた人が回答する。
これだとなかなか回収率は高まりそうにありませんね。。
では、チェックインのときに手渡ししてお願いする、というのはいかがでしょう。
手厚く出迎えてもらった直後に、笑顔とともにお願いされたら「ちょっと書いてみようかな」という気になるかもしれません。
「ぜひお声をおきかせください!」と笑顔でお声掛けするのも良さそうですね。
館内の説明をしつつ、朝食券などを渡すタイミングはある程度の関係性ができあがり、宿泊客様の聞く姿勢がしっかりできています。
そのときに「そしてこれはご宿泊アンケートです」と差し込むことで、聞く姿勢のまま受け止めてくだされば、強い印象として残ります。
- お部屋に何気なく置いてあるアンケート
- 丁寧に応対してくれたスタッフに笑顔でお願いされたアンケート
どちらの方がより答えたくなるかは、明白ですね。
これが「外側」の工夫です。
内側の工夫
そして、内側の工夫。
内側とは、「アンケート紙面」です。
たとえば、こんなアンケートはいかがでしょう。
例をご用意してみました。
本日はお越しくださいましてありがとうございます。
春らしくなってまいりましたが、このあたりはまだ朝晩は肌寒いこともあります。どうぞお気をつけてお過ごしください。
当館では、皆さまにより良い体験をしていただくため、お客様のお声を集めております。
良かった点、悪かった点など、どうぞ遠慮なくご記載いただければ嬉しく思います。
代表者からの手書きのメッセージと、自由記入欄のみの体裁です。
いかがでしょうか。
まるで手紙のようなアンケートに仕上がっています。
季節の話題にふれつつ、いたわりの言葉も添えられています。
女将さんの「顔」が見えてくるようですね。
これなら宿泊客様は手紙に返信するようなお気持ちで回答してくださるかもしれません。
Webアンケートへの応用
上でご紹介した紙面の工夫は、手書きならではの味です。
でも同様の発想による試みはWebアンケートでもできます。たとえばこのようにするのはいかがでしょう。
入力はスマホで行います。
今は幅広い年代でLINEなどのチャットツールも普及しているので「手書きより楽」という方もたくさんおられます。
さらにWebアンケートだと、データ集計が容易になります。
上のような自由記入(文章回答)のアンケートも「形態素解析」という技術を用いて以下のようにビジュアル化することもできます。
今回は、アンケートの外側(=渡し方)と内側(=紙面)それぞれの工夫によるラポールの形成を解説いたしました。
宿泊者アンケートの回収率向上のご参考になりますように。
※上でご紹介したWebアンケートやテキストマイニングはクリアンで承ることができます。ご興味がありましたら、以下のお問い合わせからぜひどうぞ。