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【コールセンター裏話】クレームのメカニズム

コールセンターとクレーム

皆さんこんにちは。
いつもクリアンのコラムをお読みいただきありがとうございます。

今回はアンケートの話題を少しだけ離れて「クレーム」の顧客心理のお話をいたします。

私はカスタマーサポート業界…いわゆるコールセンターでの業務を約20年ほど経験してきました。
入電数の多い現場ですと、1日に20~30人のお客様の対応をします。

基本的には「わからないこと」や「お困りごと」があってお電話をくださるわけですから、クレームを受ける機会も多々あります。
今回はその経験の中から、サービス業に携わるすべての方のお役に立ちそうな「クレームのメカニズム」について解説してみます。


コールセンターでの対応イメージ

 

クレーム豆知識 5選

クレームに関する豆知識はいろいろとあります。
たとえば…

  • クレームはお昼前に起こる
  • クレーム客はファンになりやすい
  • 解決がゴールではないクレームもある
  • 見えないクレームの方が実は怖い
  • クレームの原因は実は1つしかない


長年、様々な現場で経験してきたため、挙ればキリがありませんが、5つほど並べてみました。
どうですか? ピンとくるものはありますか?

今回の主題は、5番目「クレームの原因」です。
ですがどの話題もきっとお役に立つと思いますので、1つ目から解説していきますね。

クレームする男性

 

 

クレームはお昼前に起こる

一日中、お客様サポートをしていると「お怒りのお客様からのお問い合わせ」が多い時間帯というものがあると実感します。
それは、お昼前。

これはなぜでしょう?

答えは単純。「お腹がすいているから」です。
人間は誰しも、お腹がすくと怒りやすくなるものです。
目の前にある製品がうまく動かなかったとき…「困る」というのはいつでも同じです。
しかし「怒り」がこみ上げてくるかどうかはそのときどきによります。
もっと言うと、「お腹の空き具合」とリンクしてしまうもののようです。

重たいクレームでなかなか妥協点が見いだせない案件の場合。
状況が許すならば、少しお時間をいただくようにします。

もちろん「できるかぎりのご対応をするため関係各所にあたる」というのが一番の目的です。ただ、時間を置くことで「お昼をまたぐ」という所作にも一定の効果があります。

お昼をまたぐとどうなるか。

そうです。「お腹が満たされる」んです。それだけでもお怒りはある程度収まります。あとはお互い冷静に、問題になっている点について話し合い、ご納得いただける妥協点を見つけるための会話を重ねていけば良いのです。

もちろん、相手は生身のお客様ですから、絶対ということはありません。

でも、「時間を置くこと」「お昼をまたぐこと」に一定の効果があるということは経験上、実感しております。
ぜひご参考になさってみてくださいね。

 

空腹の女性

 

 

クレーム客はファンになりやすい

窓口に問い合わせてクレームをおっしゃるお客様。
しっかりとした対応ができれば、その企業やサービスのファンになってくださることが実は多いのです。

このコラムの後半でお伝えする「クレームの原因」ともつながる話ですが、クレームを言われるお客様は、もともと商品やサービスに熱い思いを持ってくださっているということがよくあります。

  • 「うまく活用ができない」
  • 「想定した機能を果たしててくれない」


こうした思いがつのり、クレームを生みます。
では、同じお客様が、こんな状況だったらどうでしょう。

  • 「フル活用できた」
  • 「想定どおり(想定以上)の動きを果たしてくれた」


こんなとき、私たちが想像する以上に喜んでくださいます。

つまり、強い思い(エネルギー)がマイナスに働くか、プラスに働くかの違いだけなんです。

これは、既にクレームが起きている場合にも言えることです。
今、発生している問題を上手に解決すると「大きなマイナス」が「大きなプラス」に転換されやすいんです。

  1. 製品を購入した
  2. 操作が難しく思うように動かない
  3. サポートに問い合わせた
  4. 状況把握が的確で、わかりやすく説明してくれた
  5. 素晴らしいサポートを受けられて○○社への印象がむしろ良くなった


文字にしてみると、うまく行き過ぎのように思われるかもしれません。
でもこうしたケースは実際のところ、決して珍しいものではありません。
もともとストレートに思いをぶつけてくださるということは、満足いただければプラスの思いもストレートに表現してくださいます。

その後も継続してファンになってくださることも多いので、怖がらずにしっかりと対応していきたいですね。

 「ファン」のイメージ画像

 

 

解決がゴールではないクレームもある

クレーム案件とは「クレームが発生し、収束するまで」の一連の流れを指します。

クレームはどうすれば収束するのでしょう。

お客様の抱えている問題が解決すれば、もちろん収束します。
でも実は、解決しなくとも収束する場合があるんです。

たとえば、製品やサービス自体には問題がないという場合。
特に不備がなく「たまたま」トラブルが発生してしまうというケースがあります。
例を挙げてみますと、こんな場合です。

  • お客様の操作ミス
  • 置かれている環境に起因(湿度が高すぎる・温度が低すぎる、等)
  • インフラ(電気・通信等)の不具合


製品やサービスに問題がない場合、サポート窓口でそれを解決することはできません。
できることは何でしょうか。
それは「状況を把握し、説明する」ことです。

なぜ今そんな状況になっているのか。
どうすれば防げるのか(あるいは防ぎようはないのか)。

キーワードは、納得感です。
この種のクレームの場合、お客様は「何がどうなっているのか」がわからず戸惑っています。その戸惑いは、時として「怒り」に変わります。

その戸惑いに共感すること。そして何が起きているのかを説明すること。
それだけでクレームが終息することも少なくありません。

  • 「(気持ちを)わかってくれた」
  • 「なるほどそういうことだったのか(原因)」
  • 「インフラが修繕するまで、今は待つしかないんだね(暫定策)」


そんな思いをもって、「完了」となることもあるんです。
「どうしても解決しなければ」と思うとなかなかゴールにたどりつけず、遠回りになってしまうことがあります。

  • お客様のお気持ち、お察しいたします
  • 〇〇という状況なのでお待ちいただくしかなさそうです


こうした態度や案内も、収束への有効な一手です。

「本当に解決しなければならないのか」と一度立ち止まって考えてみるというのも大切ですね。

納得している男性のイメージ

 

 

見えないクレームの方が実は怖い

一般的に、クレームとは誰の目にも明らかなものです。
お客様の不満が発露している状態ですので、当然ですね。

でも、実は「見えないクレーム」というものもあるんです。
別名「サイレントクレーム」と呼ばれます。

これは別のコラムの中で詳しく解説しておりますので、こちらをご参照ください。※下記ページの目次から「5 サイレントクレーム」へジャンプできます。
参考:コラム「【宿泊者アンケート】ネガティブコメントの上手な受け止め方」


クレームの原因は実は1つしかない

必ずそこにある「期待」

おまたせしました。ついに本題です。

皆さん、クレームの原因は何だと思いますか?
実は掘り下げてみると原因は1つしかないんです。

人は、サービスを受けるとき、必ず何かしらの「期待」をします。

たとえばレストランに入るとき…
どんな内装かな。
どんな接客かな。
どんな料理かな。
流れている音楽は。

たとえば新しい製品を買うとき…
どんなに便利になるだろう。
どんなに楽しい体験ができるだろう。
みんな羨ましがるかな。

たとえば映画を見に行くとき…
どんな素晴らしい映像だろう。
どんなハラハラする物語だろう。
どんな迫力のある音響だろう。
混んでないといいな。

映画、レストラン、家電に期待する男女

 

 

クレームの原因は「がっかり」

製品やサービスにふれるとき、本人が意識するとしないとに関わらず様々な「期待」をしています。
その期待が大きく裏切られたとき、人はがっかりします。
このがっかりが、クレームの唯一の原因だと私は考えます。

  • レストランに言ったら、ウェイターに水をこぼされてしまった。
  • 新しい製品を買ったが、使いにくくかえって不便になった。
  • 映画を見に行ったが、混みすぎていて入場も退場もひどく待たされた。


どれも「こんなはずじゃなかった」という思いが渦巻きます。

がっかりしている男性

 

一次感情と二次感情

皆さん、「クレーム」と聞くと「怒っている人」を思い浮かべますよね。
ここで「怒り」というものについて少し考えてみましょう。

「怒り」は二次感情であると言われます。
一次感情は「落胆」「悲しみ」「動揺」など。先にお伝えした「こんなはずじゃなかった」は一次感情の一種です。

一次感情が生まれたあと、ふつふつと浮かんでくる怒り。そしてその発露。
これがクレームの発生です。

ではどうしたら上手にクレーム対応できるのでしょうか。
それは、お客様の一次感情にアクセスすることです。
「怒り」に反応するのではなく「落胆」「悲しみ」「動揺」に寄り添うんです。

  • それは落ち込みますよね。
  • たしかに悲しいですよね。
  • 不安な気持ちになるのももっともです。


お客様の身に起きたことに対して、こんなふうに共感できれば、自ずと適切な態度で対応できるはずです。

二次感情:怒り 一次感情:心配・落胆・不安・悲しみなど

 

クレーム対応の秘訣は「共感」

多くの場合、クレームのお客様を更に怒らせてしまう原因は、対応内容ではなく態度です。
お客様の「怒り」という二次感情に対する反応(怯え・緊張・いらだち)が態度にあらわれ、更に燃料が投下されてしまうのです。

「お客様のお気持ちはもっともだな」とまず共感する。そこから始めれば「どんどん怒りが増幅する」ということにはならないはずです。

接客業でクレーム対応をする機会のある方は「どんな期待をされていたのか」「どんなふうにその期待を裏切ってしまったのか」というところに思いをめぐらせつつ、対応してみてください。

それだけで共感力が高まり、お客様の態度も軟化してくるはずです。

共感、思いやりのイメージ画像

 

 

「大満足」の理由もたった1つ

実は、クレームの対極にある「大満足」の根底にあるものも「期待」です。
期待していたものに対し、現実が大きく上回ったとき、「大満足」は生まれます。

ところで、アンケートの設問でこんな聞き方があります。

「当店のサービスは期待に対していかがでしたか?」
選択肢:期待以下 / 期待どおり / 期待以上

これはたいへん理に適った聞き方です。

まずお客様の中に、あらかじめ「期待値」というものがあります。

これを大きく上回っていると、絶賛していただけます。
大きく下回っていると、クレームになります。

個人差がありますので、お客様の抱いている期待値そのものは人によって異なるものです。
上のような聞き方をすることで「個々人の期待値基準での満足度」を測ることができるんです。

大満足もクレームも「期待値とその結果」に大きな関わりがあることから考えると、上の設問の的確さや重要性が見えてくるのではないでしょうか。

この設問は、クレーム防止にも役立ちますし、顧客満足度の向上にも役立ちます。

満足度を示す顔アイコン

 

 

クレームのメカニズム おさらい

今回はクレームに関する豆知識を掘り下げつつ、クレームのメカニズムについて解説してまいりました。
かなり情報量が多かったので、ざっとおさらいしてみましょう。

  • クレームはお昼前に起こる
    →そういうものだと心得る。可能ならばお昼を挟みつつ対応する

  • クレーム客はファンになりやすい
    →怖がらず強いエネルギーがプラスに働くよう対応しよう

  • 解決がゴールではないクレームもある
    共感し、わかりやすく説明するだけで良い場合もある

  • 見えないクレームの方が実は怖い
    サイレントクレームに注意する

  • クレームの原因は実は1つしかない
    →キーワードは「期待値」。一次感情に寄り添って対応しよう


さて、発見はありましたでしょうか。
接客に携わる皆様に、何か1つでも収穫がありましたらとても嬉しく思います。

長文におつきあいいただきありがとうございました!