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宿泊者アンケートでついついやってしまいがちな「ずるい質問」

ずるい質問

まずは昔からよく耳にする「お酒と車の話」から。

飲みますか? 乗りますか?

これはもちろん、法律の観点からはとても正しい質問です。
そしてキャッチフレーズとしても秀逸です。

でも、質問の形としてはちょっとだけずるいんです。

「乗るor飲む」という選択イメージ

 

 

どうずるいか

どうずるいか。これを考えるために、同じ形式の他の質問を見ていきましょう。

おもちゃを買う? それとも映画を見に行く?

子供への質問例です。
さてどうでしょう?
この質問を受ける子供の身になってみると、ちょっと窮屈ではありませんか?

もう1つ別の例を挙げてみましょう。

その10km先のお店にはどうやって行きますか? 自転車で? それとも徒歩で?

これはいかがでしょう?

「10kmもあるなら車か電車で行かせてよっ」
…と思いませんでしたか?
でも、残念ながら選択肢は「自転車」と「徒歩」のみ。

そうです。
これらの質問は、選択肢が不自由なんです。
二者択一を迫る質問ならではの不自由さ、と言えます。

「おもちゃor映画」という選択イメージ

どちらかを選ばなければならないという不自由

乗りますか?飲みますか?
これは、もちろん両方やるのはいけません。飲酒運転になってしまいますから。
では、両方やらないのは?

これはありえますよね。
たとえば子供。車は乗れないし、お酒は飲めない。
大人の場合でも「運転免許がないしお酒は飲まない」ということはもちろんありえます。
つまり本当は「どちらかを選ばなければならない」わけではないんです。

おもちゃ? 映画?
こう問われた子供がまっさきに思うのはこうです。
「えー? おもちゃもほしいし映画も見たいよ!」
しかし質問自体が暗にこれを制限しているわけです。だから、不自由と感じるんです。

二者択一の選択イメージ

 

 

宿泊者アンケートに置き換える

ここで宿泊者アンケートのケースを考えてみます。
アンケートにおいても、上のようなずるい質問になってしまうことがあります。

例1:交通手段

たとえば…

質問:当館へはどのようにお越しになりましたか?
選択肢:車 / 電車 / バス

自転車で旅をしている方もいます。
もしかしたら徒歩の可能性もあります。
タクシーも抜けていますね。

なにしろ思いがけないことはいくつも起こり得ます。
考えうるすべての選択肢を用意するか、それが難しそうなら「その他」を用意するのが最適です。

データとしては1%未満かもしれませんが、徒歩や自転車で来られた方ならではのコメントは、他では聞けない貴重なご意見となる可能性があります。
取りこぼしたくはないですね。

キックボードで移動する男性

 

 

例2:サービス満足度

他に、こんな例も考えられます。

質問:今回のご宿泊で、もっとも満足できた施設・サービスはなんですか?
選択肢:大浴場 / ご夕食 / ご朝食 / 庭園

上の例と同じで、まずは「その他」が足りません。
「貸切露天風呂が良かった」と答えたい方がいるかもしれませんし、「スタッフの方の接客がとても良かった」と思う方がいるかもしれません。
せっかく具体的にお褒めいただける場面なのに「その他」がないことでそれが得られないのはもったいないです。

お客様から好評なスタッフのイメージ



そしてこのケースでは、足りないものがもう1つ。

「特になし」

この選択肢もとても重要です。
たしかに「もっとも満足できたサービス」という設問に対し「特になし」と答えられるとしたら残念なことです。
でももっと残念なのは、宿泊客様がご不満を感じているのにそれに気づくことができない状況です。

気づかなければ改善できません。
まずは「知ること」。
これがとても大切なんです。

参考:ネガティブコメントの上手な受け止め方


アンケートで作る好循環

ここで選択肢「その他」に話を戻しましょう。

以前のコラムで「アンケートは思いがけない答えをいただくためのもの」というお話を書きました。
参考:その情報、アンケートでしか手に入りません。

まさに「その他」という選択肢は、そのためにあると言えます。
「その他」。そしてできればその後に自由記入欄を設けます。
これらがあることで2つのメリットが生まれます。

1つはもちろん、適切な(あるいは思いがけない)情報が得られること。
そしてもう1つは、回答者(お客様)を窮屈な気持ちにさせないということ。

せっかく協力してくださっているのに、答えたい「選択肢」がないと残念な気持ちになってしまいますからね。

お客様が心地よく答えることができ、そこで得られた「生の声」を元にサービスを向上させ、これをお客様に還元していく。
これが、アンケートの好循環。理想の形だと思うのです。

「声」→「改善」→「満足」の好循環