美容師さんのトークに学ぶ【アンケート質問の順番】
アイスブレイク
初めて訪れた美容院を想像してみてください。
席につき、鏡越しに美容師さんと顔を合わせます。
「お店の場所、すぐにわかりました?」
「今日はお休みですか?」
「すっきり晴れていい陽気ですね」
最初の声かけは、だいたいこんな感じでしょうか。
初対面で少し緊張していたとしても、こんな何気ない会話を重ねることで少しずつほぐれていきます。
こういう声かけを「アイスブレイク」と呼んだりもします。
アイスブレイクがあるかないかで、その後の会話のスムーズさがかなり変わってくるものです。
踏み込みの大きい質問
さて、皆さんにお聞きします。
たとえば、美容師さんの最初の質問がこんな感じだったらいかがでしょう。
「お仕事は何をされているんですか?」
「整髪料は普段からつけますか?」
「芸能人で言うと、誰の髪型がお好きですか?」
踏み込みが大きい。。これではちょっと圧倒されてしまいますね。
もちろん実際の美容師さんはお客様対応のプロフェッショナルなので、こんな質問から入ることはありません。
美容師さんたちは、誰もが共感できる、ちょっとした声かけや簡単な質問を使いこなします。そして少しずつ心をほぐして、私たちが困惑しないように上手に会話を進めてくださいます。
美容師さんを見習う
美容師さんたちは、カットの技術だけでなく、普段からこうしたコミュニケーションの勉強もされているそうです。
質問や声かけの工夫。これによっていくつものメリットが生まれます。
- お客様が心地よく回答できる
- 必要な情報を手に入れられる
- その情報をお客様のために活かせる
「情報を活かす」とは、美容院で言えばお客様の求めるヘアスタイルやカラーを作り出すこと。
旅館やホテルで言えばお食事やご入浴をより上質な体験に向上させていくことです。
質問の工夫。
ここにかける熱意は私たちアンケート師(!)も同じです。
「当館の良くなかった点をご記入ください」
たとえば宿泊者アンケートの【最初の問い】がこれだったら、いかがでしょう。
戸惑ってしまいますよね。
未記入のまま次の問いに移るか、あるいは答えるのをやめてしまうかもしれません。
「流れ」を熟考する
上のような質問は、情報収集の面ではとても重要ですが、アンケートの序盤で聞けるものではありません。
後半、回答する方の気持ちが温まってきたときに、言葉に気をつけながら聞くようにします。
大まかな流れとしてはこんな感じです。
ステップ1 考えずに答えられる質問
- 年代
- 性別
- 旅行の目的
このあたりは、宿泊者様も深く考える必要がなく、アンケート自体に不信感がなければ即答できます。
きっとリズムよく答えてくださるはずです。
※年代や性別を聞くのは、実は【リズム】のためだけではありません。「なぜ年齢や性別を聞くのか」はこちらのコラムで解説しています。
→コラム:アンケートが性別や年齢を聞いてくるたった1つの理由
ステップ2 答えやすい質問
- 当館を選んだ理由(選択方式)
- 当館で印象に残っていること(選択方式)
- その理由(自由記入)
選択形式であれば、答えやすいです。
選択肢ですべて網羅できないことがあるので「その他」があると更に良いですね。
「その理由」は自由記入(文章で答える質問)です。自由記入は選択式に比べて答えにくいとされています。しかし前の質問で自分が選んだことを自分の言葉で補足するだけなので、ハードルは低めです。
ステップ3 やや答えにくい質問
「ここを直せばもっと良くなる」というお気づきの点があれば、ぜひお聞かせください
ステップ1、ステップ2を経てこの段階まで来ると、思い当たることがあれば書いてくれる方が多いでしょう。
お気づきですか?
順番もそうですが、聞き方も変えています。
「当館の良くなかった点をご記入ください」
こう聞かれるよりもだいぶ答えやすくなっている…と思いませんか?
ネガティブな意見を気分良く書いていただく
アンケートでは褒める言葉は書きやすいですが、気になった点を指摘するのは少し勇気がいります。
「相手を嫌な気分にさせたくはない」というのは誰もが感じることです。
そしてお客様は、アンケートに記載すれば運営側がそれを目にするということを知っています。
(どう思われるだろう)
(嫌な思いをさせてしまわないかな)
そんなふうに考え始めると、マイナスの意見はなかなか出しにくいものなんです。
でもアンケートをする側としては、マイナスの意見もぜひいただきたいものですよね。
改善のヒントはネガティブな意見から得られることがほとんどですから。
※「ネガティブコメントがなぜ必要なのか」はこちらで解説しています
→コラム:ネガティブコメントの上手な受け止め方
お宿を良くしようとすればこそ、マイナスの意見もしっかりと集めたい。
そして、できれば気分良くそれを書いていただきたい。
だから、質問の仕方を工夫します。
【役立つ】ということを伝える
「ここを直せばもっと良くなる」というお気づきの点があれば、ぜひお聞かせください
繰り返しになりますが、この聞き方がオススメです。
そして、アンケートのまえがきやあとがき部分でも思いを伝えると良いでしょう。
例1:まえがき
当館は「より良い旅館であろう」と日々努力を続けています。
どんなご意見もお待ちしております。ぜひお気軽にお声をお寄せください。
例2:あとがき
楽しい旅の貴重なお時間をいただきありがとうございました。
いただいたお声を元に、より良い旅館を目指してまいります!
「施設の改善に役立つ」ということが伝えられれば、ご意見がもらいやすくなります。次に来館したときのご自身の快適さにもつながることもイメージしていただけます。
せっかく宿泊客様の旅行中の大切なお時間をいただくのですから、ぜひ価値のあるやりとりになるようにしたいものですね。
質問の工夫には「これで十分」ということはありません。
私も上に挙げた例だけでなく、更に良い聞き方はないか、日々模索中です。
あ…。今回のテーマは「質問の順番」でした。熱が入りすぎて、ちょっとずれてしまいましたね。。
また次のコラムでお会いしましょう!